「パターン、Wiki、XP」を読んだ
パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
- 作者: 江渡浩一郎
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2009/07/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 75人 クリック: 1,306回
- この商品を含むブログ (155件) を見る
もうすっかりはてなで安住してしまって幾星霜。すっかり界隈とはご無沙汰でしたが、来週の集まりに久しぶりに参加する事にしまして、課題図書「パターン・Wiki・XP」を読んでみた。届いてから寝る前に1時間ぐらい読むのが2日、朝早く起きてしまったのであいた時間で最後Wikiの項からおしまいまで一気に読んで読了。
もともとetoさんから話を聞いたり界隈で見聞きした事項も多かったという事情もある。
ただ、Wiki道(みち)の話*1は残念ながら載っていなかった。まだ出典が見つかっていないのだろうか?
読んでの感想は、「都市計画や町づくりの人は読むべきだ。」ぐらい。それよりも、いろいろ付随してアイデアや従来の事項との相関が見えて来た。
中でも、再設計やリファクタリングというのが、民藝での最適化過程とかぶる所がある様に思う。まず「アノニマスデザイン」は「無名の質」と概念が相似するし、「無名の質の向上」=「再設計もしくはリファクタリング」であって、再設計とリファクタリングを繰り返し行い、その中でエネルギー的な極小点を目指して最適化を行う事を繰り返すと考えると、民藝をアレグザンダー的な考えで再解釈した事になるだろう。しかし、プログラムは同じ物を何度も作らないから、リファクタリングの訓練を行う事がない。しかし、工芸品などは1つ1つがスタートからフィニッシュまでの繰り返し作業であり、繰り返しの中でのリファクタリングが出来る。そこがもの作りの繰り返し作業とプログラミングの大きな違いである。しかも、指導的立場の方と、育てられる工人側とのやりとりは、ペアプロやXPに通じる所がある。ここも非常に民藝との相似を感じる所である。
またその際、エネルギー的な極小点もしくは最小点を目指して最適化する時に、時間的制約は有効なのだろうと思う。(この話については、こちらを参照:Radium Software 「質より量に学ぶ」http://d.hatena.ne.jp/KZR/20080808/p1)また李朝の様に、材料の制約*2も重要なのかもしれない。
時間的制約と言えば、以前富士山麓の施設に監禁されて英語を話す合宿に参加した際、始終「Faster Faster Faster」と急き立てられていたのを思い出した。あれは今思えば脳内のリファクタリングの強制だったとも考えられる。
ただ、ひとつだけ残念なのはTeXを「組版システム」と書いている事。あれは「組版システム」ではなくて「活版印刷における全工程をコンピュータ内で忠実に再現したもの」だと私は考えているので。(まあ、La付きを使っている限りは、何がしかのルールに基づいた組版システムとしか見えないが、生のTeXをいじって、かつ活版印刷の行程を考えると、納得出来るだろう。しかも、人間が出来る所は人間に渡し、人間が苦手で職人的な習熟が必要な所はすべてアルゴリズムによって自動化されている。これこそ真のComputerAssistedなシステムだろう。Knuthは本当に恐ろしい人だ。)その昔、小泉均さんが「ボックスを並べる真似事ソフト」を作って、活版への興味を喚起すべく配布していたけれども、あれはあくまで真似事であって、底が浅かった様に思う。それとTeXでやってる事とが決定的に違う様に、「組版システム」と「活版印刷の再現」とはまるで違う物だと私は考える。