あおしまの日記

あおしまさんの日記らしいです。個人的に興味がある事を時々書きます。スマートウォッチPebble日本語パックを作成、公開しています。

何で日本人なのに英語が(使え|しゃべれ)ないのか?

何で日本人なのに英語がしゃべれるの? | 31o5.com
http://31o5.com/2009/07/%E4%BD%95%E3%81%A7%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%AB%E8%8B%B1%E8%AA%9E%E3%81%8C%E3%81%97%E3%82%83%E3%81%B9%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%AE%EF%BC%9F/

非常に面白い。興味深い。しかし現状は、そんな事考えたことのない人が既に数世代にも渡って教えられる立場を通過し、そのうちの一部が教える立場に立ってしまって今日があるがためにこんな事になっている。

以前も紹介した事があるが、広島の馬本先生*1が追いかけている事が過去の事実を明かしている。興味がある方は追っかけると面白いでしょう。(私は追いかけるほどついて行けないので、面白いなあと思って眺める程度にしています。)

そういう研究をされている先生方の考えとは一部外れている点もありますが、私が今までの見聞を総合して、「日本の英語公教育がまずいのは何となくこういう事情なんじゃあないか?」と思っている経緯とその問題点を以下と考えています。過去にもさらっと流して書いた事があるがもう一度。*2

  • 日本人は学がある人が学がない人に教える事で知識伝搬をして来た。時代劇なんかにある告知のタテカンを読める人が口に出して解説しながら読めない方に伝えるとか、歌に政治批評を乗せてみたり*3だとか。
  • もっと言うと、学問を習える人が極限られた特権的地位や階級の方であった。その方々が、ノブレスオブリジュに基づいた知識伝搬を担う事で、学問が伝播していった。
  • こと諸外国語においても同様
  • 外国由来の学問についても同様。
  • つまりは、少数の解る者が、解らない者の為に奉仕する事で学問の伝播を期待するシステム。
  • 限られた翻訳家を育成し、海外の知識は翻訳を介して広める事とする風潮は変わらず。
    • 「解体新書」なんかその好例。
  • こと英語においては、特に初期は漢文の読み下し方法を応用する事での解釈と翻訳を行っていたグループ*4があり、その方々が初期英語教育の伝播を担っていた。
  • その中の1人が福澤諭吉である。また、彼を頂点としたユニットが、日本の今日に至るまでの英語教育を指導し担って来た。
  • その後、漢文解読の方法を援用する事がかっこわるいということで、ガイドなしに読み下す方が望ましいという風潮がおき、レ点、語順番号付け等の使用が風化。*5
  • 英語教育法が「漢文の素養がある者が、その方法を援用して翻訳を行う」事から、「漢文の素養ある者が、ガイドなしに読み下し、翻訳を行う」へと変容。そしてそこで英語教育が「翻訳家育成法」として固まる。
  • 同時に、より良いより自然な日本語表現へと定型的な翻訳を行う為に、熟語や構文というパターンを重用する流れに。
  • この時点で、紙の上に固まっている文字列を、パターンを多用して日本語化する能力を、伝授し、広める事で、より多くの「静止している英語文字列を日本語に転換する」翻訳者を増やす事が、英語教育であり、その先にこれら教育を施した者が海外書籍の翻訳を行うことで文化文明がより多くもたらされる機会を広げる事が主眼となった。
  • 「静止した英語文字列の翻訳」に慣れた者が、「英語の扱いに長けた者」とされ、その方法を伝授していく事となる。
  • よって、彼らが学んできた方法が、「翻訳家育成法」であるにもかかわらず、「英語教授法」として今まで延々と拡大再生産されて定着して続いている。
  • このため、静止した文字列へのパターンを用いた解釈法には長けているが、フローには対処出来ない。
  • その結果、フロー(会話や、高速な文字列読解)処理が行えない。
  • 翻訳家育成法ベースの現行の英文解釈方法で、無理矢理フローの処理を行おうとする場合、以下の様な脳味噌の動作を要求される。
    • フローを脳にストックしつつ
    • 所々のユニットを切り出して
    • ショートカット辞書によるパターニングと翻訳を行い
    • しかも日本語と英語の進行するベクトルが全く逆なので、対象を遡上しながら解釈を継続
    • 解釈した日本語を脳で意識
    • これら全てを並列動作させる
  • 過去の翻訳家育成教育が発展し、とくに会話等の補強が求められELT教員が採用されるなど小手先の対処を行ったが為に、現代英語教育では、フローを上記のような超絶技巧でもって処理で行わせる「国民総同時通訳家育成教育」へと意図せざる形で変容している。
  • これは脳味噌の働きとして、ごく限られた素養を持つ者以外は無理な事であるが、先達からの盲目的な学習法の継承により、この行為を強要する教育を行っている。
    • その延長に、英語が出来る人=(種々の並列動作が行える脳味噌を持つ)頭がいい人、というイメージが形成されたのではないか?
  • だが、冷静に考えれば、国民が全て同時通訳家になる事など出来はしない。
  • 更に現代は、漢文の素養を持つ者が非常に減っている
  • また現代は、江戸末期〜明治〜戦前期に比べて、圧倒的に「国民総同時通訳家育成教育」を受ける者が増えている。
  • よって、「同時通訳家もしくは翻訳家には向いていない」脱落者の実数は、より多く現れる事に。
  • 以上より「日本で6年間も英語教育を受けて、話せる人がいない」のではなく、「日本で6年間も同時通訳家もしくは翻訳家になる為の教育を施されて、その方面には向いていなかった人」が多数居ると考えるべきである。
  • また、フローに対する視点の欠落の結果、サウンドに対する教育が欠落している事にも注目。(フォニックス?フォネティクス?など。)
  • だから、小学生から英語に「慣れた」としても、中学以降のカリキュラムが従来どおり「国民総同時通訳家育成教育」で変化がないとするならば、「英語に抵抗はなかったはず」だが「翻訳家教育」から脱落する者は当然大多数にのぼるだろうし、その結果、現在の状況と大差のない結果に落ち着くだろう。
  • しかし、現在英語教育の世界に占める重鎮の方々は、「国民総同時通訳家育成教育」を勝ち抜いて来た方であり、それを当然とし、盲目的再教育に無自覚な方々である。
  • その結果、教育指導要領等が大々的に変わる事は考えられず、今後も同じ方針で続くだろうと容易に想像が付く。
    • 上に挙げてきた理由から、小学校での英語教育は、中学以降のカリキュラムとリンクさせての抜本改革が必要だが、それを期待するのは難しいだろう。
  • もともと、日本の英語教育、外国語教育が「限られた者が翻訳を行うことで知識を広める」事が前提であり、英語教育は翻訳を行う人員を増やす事で多種多様な文化学問を翻訳紹介する機会を広げることが目的である頃のシステムを盲目的に踏襲している。
  • 「全員が英語を、フローの英語を使いこなせる」事を根本的に必要としていない。これが英語教育の立脚点なのだから、現状はその結果を忠実に反映しているとも考えられるだろう。
  • 今後も、公教育を施したところで、「日本人なのに英語が使える」人のほうが少ない状況は続くだろう。
  • では、この対策はどう考えるべきか?
  • 「翻訳家に向いていなかった方」が「英語が使える様になる」ためには、「翻訳家教育とは別個のアプローチ」に逃げる事が実に有効である。
  • steadyを作る、留学する、興味を持った事に英語をリンクさせる、etc.など、「こうすれば良い」ノウハウは、今まで山の様に世に提示されて来たはずである。それらが有効なのは上記の理由にあるのではないか?と私は考える。
  • そう考えれば、彼は、「翻訳家教育での経験を基礎とし、海外移住する事で別のアプローチによりうまく移行できた」人であり、彼は「普通の言語処理モードでなんとなく英語を処理している」人になってしまっている。おそらく翻訳家的な処理からは開放されているため、これが難しいとは意識しない。
  • 対して、質問する側は「翻訳家になれない日本人」の考え方である。
  • あの日記で紹介されたやり取りは、「あんなに難しい同時通訳がなぜできるんでしょうか?」と聞いている側と「普通に話しているだけなんだけど」との噛み合わない対話、の表れではないかと考える。
  • しかし、これらの方法は、全て「天から降る雨を待つ」「タナボタ」であり、確実性に乏しい。
  • よって英語教室は花盛り、英語教育の本は山ほど出るが潜在市場は拡大し続ける。
  • 中には脳科学の成果をつまみ食いして、ご大層な形に仕立てた物もあるようだ。
  • より確実性がある「メソッド」「ストラテジー」が、現在求められているのではなかろうか?
  • それは、餅は餅屋、英語教育のスペシャリストが蓄積してきたテキスト等が有用なのではないかと私は考える。つまり、英語で書かれた英語教育法の本でもって習う事である。
  • 第2外国語として英語を学習するためのノウハウも多く持つのは、日本国内ではなく英語圏のほうだろう。常識的に考えて。

ざっと以上の様な考えを私は持っている。裏付けを丹念に追う気はさっぱりないので、裏付けはない。だから頭から信用しない様に。まだまだ気が向いたら追記するかもしれませんがこんなところでおしまい。

*1:id:umamoto

*2:英語を英語で学ぶ前に http://d.hatena.ne.jp/aoshimak/20081224

*3:演歌のルーツ

*4:大阪の適塾門下

*5:「直読直解法」というらしい。